ダブルスウィッチ



細く長く息を吐き出しながら、えみりはゆっくりと身体を起こした。

自分の体に久しぶりに戻った喜びと、昨夜の亮介との情事はこの身体じゃなかったんだという焦燥感がえみりを支配する。

ゆっくりと自分で自分を抱きしめながら、ふと彩子のことを思った。

彩子もまたこの身体で亮介に抱かれたのだ。

しかも何年ぶりかで……

えみりでさえこんな気持ちになるというのに、彩子の心中を思うと苦しくなった。

他人の身体で愛する人と結ばれるほど残酷なことはない。

抱かれてる間、亮介が見ているのは自分ではなく他の女性なのだ。

自分じゃない誰かを抱いている男に感じている自分。

まるで自慰のようだとえみりは自嘲気味に笑った。

自分も彩子も狂ってる、と。

入れ替わってまで亮介に抱かれたいと願った彩子と、別れる決意をしながら最後に受け入れてしまったえみり。

真逆に見えてもやってることは同じだ。



ショートパンツから伸びた脚をつま先からマッサージしていく。

毎日欠かさずにしていた日課だったけれど、入れ替わってる間に少しむくんだようにも見えた。

キャミソールから覗く形のいい乳房を両手で包み込みながら、彩子のそれと比較する。

弾力のない肌を思い出して、それでもあの身体で亮介を喜ばせることが出来たのだと不思議な感覚に陥った。



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