ダブルスウィッチ
えみりが誘ったのに、すっかり彼のペースになってしまっていた。


レストランについてからも、慣れた様子でえみりの背に手を添えて、案内された席までエスコートしてくれる。


こんな男性は初めてだった。


今まで付き合った男の子とはレベルが違う。


つい最近まで付き合っていた彼はいつもお金がなくて、遠慮して牛丼屋に入ろうと言ったら、100円のハンバーガーでもいいかと聞かれたくらい情けない男だった。


彼と付き合ったら、今まで知らなかった世界を見せてくれるかもしれない。


奥さんがいても構わないとえみりは思う。


この人を、どうしても手に入れたくなった。


食事をしながら、飲み放題なだけに、えみりはガブガブワインを飲んだ。


そうしないと緊張して、話なんか出来ないと思ったからだ。


「大丈夫?飲み過ぎじゃない?」


そう聞かれたときにはもうすでに盛大に酔っぱらっていて、答える口調も呂律が回らなくなっていた。


デザートなど食べられる状況じゃなくて、閉じそうになる目を必死に開けているのがやっとだ。


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