ダブルスウィッチ
お金を払わなきゃいけないのに、意識が朦朧としている。


ふらふらした足取りを支えるように、彼はえみりの肩を抱いてくれていた。


「私が払います!」


そう言った記憶がある。


けれどえみりの記憶はそこまでで、払ったのかどうかまでは覚えていなかった。


目が覚めたとき、寝かされていたのはふかふかのベッドで、驚いて起き上がったと同時に頭を抱えた。


どうやら二日酔いらしい。


割れるように痛む頭を庇いながら、ゆっくりと周りを見回してみる。


どうみても、ここはホテルの一室だった。


もしかしたらと、隣に目をやるも寝ているのはえみり一人。


よく見ると、ベッドはシングルで一人用の部屋だった。


ゆっくりとベッドから這い出してみると、服は昨日のままで、髪はボサボサに乱れている。


ふとテーブルの上に置いてある一枚の紙に目が止まった。


急いで拾い上げると、そこには几帳面な整った文字がきれいに並んでいる。


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