ダブルスウィッチ
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昨日はずいぶん酔っていたので、部屋をとらせてもらいました

支払いは済ませてあるので、ゆっくりしてていいからね?

僕が脱がすわけにもいかないので、そのまま寝かせちゃったんだけど、服が皺になってたらごめん

昨夜は楽しかったです
ありがとう

森野

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やってしまった、とえみりはその紙から手を離して呆然と立ち尽くす。


ヒラヒラと床に落ちていく紙を見つめながら、自分の醜態を呪った。


彼との甘い夜を夢見ていたえみりにとって、有り得ない姿を晒したことになる。


もう、会ってはくれないかもしれない。


お礼だと言っておきながら、会計をしたかさえも定かではないのだ。


最悪だった。


けれどこれをきっかけに、えみりと亮介の間に転機が訪れることになる。


謝罪のメールを送り、リベンジさせてほしいと、彼に頼んだときのことだ。


(じゃあ今度は、僕が行きたい場所に付き合ってくれる?)


後から思えば、えみりに無理をさせないよう、そう言ってくれていたのだ。


だからこの間の食事代も受け取ってはくれなかった。


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