ダブルスウィッチ
しごく真っ当な大人の意見。


えみりは自分の容姿に自信を持っていた。


だから今までこんな風に自分から仕掛けなくても、向こうから寄ってくるのが常だった。


自分が迫れば、男はみんな堕ちるとさえ思っていただけに、彼の言葉は余計にえみりに火をつけた。


ふいをついて彼の唇を奪う。


熱い眼差しで彼を見れば、彼も動揺することなく真っ直ぐにえみりを見ていた。


「俺は面倒なのは嫌なんだ

妻と別れるつもりはないし、君ともしそういう関係になったとしても、なにも与えてやれない」


まだ三回しか会ったことのないえみりのバカみたいな要望に、きちんと答えてくれる彼が好きだと思った。


『僕』から『俺』に変わったのは、少しだけ親近感を持ってくれた証拠かもしれないと、えみりはそう言われてもなお都合のいいことを考える。


「わかってます……

それでもいい

会って間もないのに、信じられないかもしれないけど……あなたのこと気になるんです

だから、割り切った関係でもいいから、そばにいちゃダメですか?」


懇願するように彼を見つめる。


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