ダブルスウィッチ
こんなに誰かを手に入れたいと思ったのは初めてだった。


早く彼と肌を重ねたいと思ってるなんて、信じられないことだった。


えみりは今までセックスには淡白で、それなりに何人かと関係を持ったことはあるけれど、そんなにいいものだと思ったことはない。


友人たちに聞くような、イクというものがどういうものなのかもまだ知らなかった。


触れられれば気持ちいいと思うけれど、ただそれだけだ。


会うたびに求められることに苦痛を感じたこともある。


もしかしたら、長く続かない理由はそこだったのかもしれない。


しなくていいのなら、そっちの方がいいとさえ思っていた。


だから、彼にこんな気持ちになっている自分にえみりは戸惑っていた。


ジワリと沸き上がる欲は、今まで感じたことのないものだったから……


彼に触れた唇が熱い。


軽く触れただけなのに、もっと深く触れあいたいと、えみりは思う。


そんなえみりを探るように見ていた彼は、やがてふぅと息を吐いた。


「なんで俺なの?

君から見たら父親くらいの歳だろう?

そんなに綺麗なんだから、いくらでも相手はいるんじゃないのか?」


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