ダブルスウィッチ
その目はさっきまでと違って、冷たく射るような眼差しだ。


ゾクゾクした。


軽蔑されてるのかもしれないと思うのに、えみりの体は鳥肌がたったように粟立っている。


「私、同年代の男の子にこんな気持ちになったことなくて……

だから、なんでって言われてもよくわかんないんです」


木枯らしが吹いて、えみりの髪をまきあげた。


ブルッと体を震わせると、彼の腕がえみりを閉じ込める。


「どこか、暖かい場所で続きを聞こうか?」


「えっ?」


驚いて見上げた彼の目は、優しいものに戻っていた。


そしてこの日、えみりは亮介と結ばれた。


それから一年の付き合いになる。


会うのはいつも素敵なホテルで、彼が予約を取ってえみりが先に待ってるというのが二人のルールになっていた。


メールはほとんど簡素なもので、浮気対策なんだということは気づいてた。


最初からわかっていたことだから、奥さんに嫉妬することもなかったし、彼からも家庭の匂いはいっさいしなかった。


だから大丈夫なんだと思っていたのだ。


彼を独占したいなんて、バカな考えは浮かばないんだと、えみりは本気で思ってた。

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