ダブルスウィッチ
だからつい、そう聞いてしまったのだ。


「彩子、少しは素直に喜んだらどうだ?」


急に不機嫌になる夫にますます不信感が募る。


「だから、嬉しいって言ったじゃない

だけどこんな高価なもの買えるほど、お小遣い渡してないから、どうしたのかなって思っただけよ」


クリスマスの料理は毎年彩子が腕によりをかける。


ターキーは丸ごと焼いていたし、ケーキだってイチゴの生クリームのものをスポンジから焼くのが当たり前になっていた。


出来合いのものなどテーブルに並べたことがないのは、彩子の専業主婦としての意地だった。


部屋も隅々まで掃除を怠らなかったし、洗濯だってアイロンがけだって完璧にこなしている。


結婚相談所で知り合った亮介は、パソコンの画面の中ではものすごく待遇が良かったのだ。


高学歴、高収入、おまけに家庭に入ってくれる人を条件にあげていた。


ちょうど仕事で疲れきっていた彩子がすぐに飛び付いても仕方のない条件。


金持ちの人と結婚して、家に入るなんて最高だと当時は本気で思っていたのだ。

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