ダブルスウィッチ
彩子は少なくとも彼に好意を抱いていたけれど、彼の方は彩子に興味がないように見えた。


おざなりのセックスは、彼がイカずに終わることも多々あった。


だから彩子も乱れた姿など見せたことはない。


淡々と儀式のように行われるセックスに、自分ばかり夢中だと思われるのが嫌だった。


本当は彼に触れられれば嬉しかったし、繋がれば安心できたけど、淫乱なのだと思われるのが怖かった。


冷めた目でそれを見下ろされたら、自分がまるで処理するための道具のように感じてしまうから……


声を押し殺し、たまに訪れる波に体を震わせながらも、彼が終わるのを必死に耐えた。


彼がイカないときの虚しさは、誰にもわからないだろう。


自分が役立たずなのだと、悲しくなる瞬間だ。


なにも言わずに引き抜かれたときの、あの惨めな瞬間。


潔癖な彼は、自分が終わっても終わらなくても必ずシャワーを浴びるために一階へと降りていく。


寝室にはセミダブルのベッドが二つ置かれていて、間にはやはり輸入物の洒落たルームランプの置かれたサイドテーブルがあった。


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