ダブルスウィッチ
愛などない、条件だけを満たした契約社員みたいな結婚。


それでも我慢できていたのは、彼が他を見ることがなかったからだ。


彩子を見ていなくても、別の女性を見ていないならそれで良かった。


彼のために料理をして、掃除をして洗濯をする。


たまに来客があればいい妻として振る舞ったし、パーティーがあればしっかりと妻の役目を果たした。


少ないながらも肌を重ねることはあったし、彼がイカなかったとしても、彩子に少しは興味を持ってくれていたんだと思っていたから……


彼が彩子に触れなくなってからもう三年だ。


もしかしたら彼はセックス自体にそれほど興味がなかったのかもしれないと、納得しかけてたときに訪れた浮気の疑惑。


それは彩子の心をザワザワさせた。


仕事に取られるのは我慢できたけれど、他の女に取られるのは話が違う。


離婚はしないと約束させておきながら、自分は彩子以外の女性を抱いているのだ。


ただの紙切れで繋がった関係は、そんな裏切りさえも黙認しなくてはならないのかと彩子は憤りを隠せないでいた。


< 44 / 273 >

この作品をシェア

pagetop