ダブルスウィッチ
「亮介さん……もう帰るの?」
おもむろにベッドから起き上がった亮介に、えみりはそう声をかける。
備え付けられている時計の針は、まだ12時を少し回ったところだ。
いつもなら、少しだけ眠って2時頃帰っていくはずなのに……とえみりは思う。
亮介はまだ横たわっているえみりの額にそっとキスを落とした。
「またすぐに会えるさ
えみりは聞き分けのいい子だろう?」
そう言えばえみりに引き止めることは出来ないと、彼は知ってるのだ。
「うん……今度はいつ会える?」
気だるい体にシーツを巻き付けて上半身だけ起こしたえみりは、甘えた声を出してみる。
すでにベッドから抜け出してガウンを羽織っていた彼は、ゆっくりとえみりの方に振り返った。
「明日から出張なんだ
だから、来週かな?」
そう言い残して、彼はシャワーを浴びにいく。
帰る前には必ずそうするのが、亮介の決まりごとだった。
「すぐに会えるって、言ったくせに……」
亮介の返事が少しだけ不満だったえみりは、頬を膨らましながら誰に言うでもなく、一人呟く。