ダブルスウィッチ
エスカレーター式の私立の女子校。


姉妹は三人とも同じ学校に通った。


家に見合ってないお嬢様学校が、家計を逼迫していたことを彩子は知っている。


ブランド思考の母親が、自分の見栄だけで受験させたのだ。


それでも両親は必死に働いて、彩子たち三人ともを無事卒業まで通わせてくれた。


おまけに花嫁修行と称して、お茶やお花も一通り習わせてくれた。


その甲斐あってか、妹たちは一流と呼ばれる企業に就職し、それなりに条件のいい相手と結婚した。


すぐ下の妹は、親の面倒を見るという理由で次男である夫と共に実家を壊して二世帯住宅に建て替えて住んでいる。


『お姉ちゃんを待ってたらいつまで経ってもお母さんたちが心配だから』


それが建て替えた理由。


彩子の好きだった木の温もりのする家は壊され、モダンな今風の建物に様変わりした。


本来なら、彩子自身も一流企業に就職が決まっていた。


けれど入社する直前に体を壊して入院したせいで、それを辞退することとなったのだ。


ほどなくして退院したものの、そこから彩子の人生は狂った。


派遣を転々としながら、いつ切られるんじゃないかと怯える日々。

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