ダブルスウィッチ
それでも20代の頃はすぐに仕事も見つかったけれど、30を過ぎればここを切られたらどうしようという思いが強くなっていった。


それなりに派遣先では気に入られたし、少し細身の小柄な彩子は頼りなげなのか男性社員からはよくモテた。


それが引き金となり、女性社員からは目をつけられることが多く、やめざるを得なくなったことも少なくない。


何人かと関係を持ったこともあるけれど、結局最後には正社員の若い女の子と結婚していく。


だから焦ったのだ。


このまま一人で派遣社員で生きていくのは辛すぎると。


そういう意味では、彩子も亮介と変わらない。


条件で選んだのは一目瞭然だ。


だから亮介も、心置きなく条件をつきつけたのかもしれない。


パソコンの情報で食いついてくる女など、条件のいいだけの男を探しているんだろうからと。


あのときの自分と彩子は照らし合わせてみる。


今の寂しい生活とどちらがましなのかを……


結局、彩子は母親によく似ているのだと思った。


ブランド思考は彩子も変わらない。


素敵な夫と素敵な家があるだけで、彩子を羨ましいと思う他人はごまんといる。


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