ダブルスウィッチ
その日の夜、亮介は帰りが遅かった。


女の匂いはつけてはこないけれど、清潔な香りはしているはず。


シャワーをどこかで浴びてきた証拠だ。


サイドテーブルの時計は、12時を少し過ぎた頃を指している。


トントントンと静かに上がってくる亮介の足音に、彩子は年甲斐もなくドキドキしていた。


昼間から燻ったままの体は、亮介を欲してる。


今日こそ自分から誘ってみるつもりだった。


一度してきているかもしれないが、罪悪感から触れてくれるかもしれない。


そんな期待を抱いて……


寝室のドアが開き、亮介が入ってきた。


自分のベッドに横たわったのを見計らって、そっと彩子はベッドを抜け出した。


少しセクシーなネグリジェは、以前に買ったもの。


自分に触れない亮介をその気にさせようと二年前に購入したものの、なかなか決心がつかずにタンスの肥やしになっていたものだ。


彼のベッドにそっと腰かけて、布団を捲る。


彼の足が見えて、ゆっくりとパジャマ越しに恐る恐る触れてみた。


ギッ……とスプリングの軋む音がして、彼が寝返りをうつ。


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