ダブルスウィッチ
じっと黙ったまま彼女の話を聞いていたえみりを、彼女はどう捉えたのかため息をつく。


『確かに信用できない気持ちはわかります

ですが、私はあなたに夫と別れてほしいと言うつもりもありませんし、夫にもあなたのことを話すつもりはありません』


彼女のハッキリとした物言いは、嘘じゃないんだと伝わってくる。


でもだとしたらなおさら何の話があるというのだろう?


『本当は……お会いして確かめたかったんですが……』


「え?」


『あなた、本当は愛人という立場に満足してらっしゃらないんじゃないですか?』


えみりは面食らった。


何を言い出すんだろうと思う。


例えそうであっても無理なことはわかりきってる。


代わってくれるとでも言うんだろうか?


『もし、そうならいい方法があるんです

試してみたいと思いませんか?』


こんな話を愛人としているというのに、彼女はなんだか楽しそうだった。


どんな方法にしろ、そんなことが出来るとは到底信じがたい。


だからはっきりと自分の気持ちを伝えることにした。


< 81 / 273 >

この作品をシェア

pagetop