ダブルスウィッチ
もちろん勝ち負けではなく話をするために呼んだのだから、それは関係ないのだけれど、それでも彩子はショックを隠しきれなかった。


あまりにも自分とは真逆の、派手なタイプ。


155センチの身長にそれなりのスタイルは、たぶん同世代の女性からすればそこそこイケてると思っている。


色白のわりにシミも少なく、あまり大きくない目元のおかげでシワもそれほど目立たない。


けれど専業主婦だというだけで、あか抜けた感じはしない。


彼女に比べたらまさに地味そのものだ。


その分、品は保っているはずだと彩子の小さなプライドがそのネガティブな思考を遮断する。


それでも、まるで雑誌の中から出てきたような彼女と地味な中年女性との取り合わせに彩子は思わず苦笑した。


「はい、そうです

はじめまして、鈴村えみりさん」


ダメだ、呑み込まれてる場合じゃない。


彩子は気を取り直してにっこりと余裕の笑みを見せた。


「どうぞ?お座りになってください」


手で椅子に座るよう促しながら、優雅な手つきで紅茶を一口飲む。


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