ダブルスウィッチ
「あの、それでお話って……」


ジッと値踏みするように見ていた彩子に、えみりはおずおずと口を開く。


彩子はようやく我に返って、背を正すとさっそく本題に入った。


「お呼び立てしてしまってごめんなさい

実はあなたに相談ていうのはね?」


そこまで言って彩子は言い淀む。


信じてもらえるだろうか?


怪しい薬を飲んではくれるだろうか?


そもそも妻になりたいと思ってはいても、それが容姿まで変わるとなれば首を縦には振らないかもしれない。


それでもえみりの協力なくしては、この計画は成り立たないのだ。


彩子は慎重に言葉を選びながら、話を続ける。


「この間もお電話で少しお話ししましたけど、えみりさん……は、現状に満足してらっしゃらないですよね?」


名前を呼ぶことに戸惑いながら、わざと決めつけるような言い方をした。


「……と、おっしゃいますと?」


彼女もなかなかの策士かもしれない。


のらりくらりと彩子の質問に答えていく。


「無言電話は、あなたでしょう?」


「――ッ!」


一瞬、重そうな睫毛が上がるのが見えた。


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