ダブルスウィッチ
わかりました……と、えみりは静かに呟いた。


「亮介さんの側にいたいって気持ちは確かにあります

数時間だけの会瀬なんて空しいだけだから……

あなたが羨ましかったし、妬んでました

亮介さんを大事にしないなら、その場所を奪ってやりたいって……思ったこともあります

だけど彼は離婚は絶対にしないって、最初に言ったんです

だから、私が彼の奥さんになる可能性はゼロだってこともわかってる

いくら頑張っても浮気相手止まりなんだって、悔しい気持ちもありました

この方法がうまくいけば、少なくともその願いが叶うんですよね?

姿は私じゃなくても、亮介さんと生活してみたいっていうのは私の夢でした




……だから、あなたの提案を受けてみようと思います」


ざわついているとはいえ、自分達の声がまったく聞こえてないわけじゃない。


現にえみりの告白に、隣に座る年配の女性がチラリとこちらを盗み見ている。


彩子は少し声を潜めて、えみりの方に体を寄せた。


「じゃあ、これから一緒に飲んでくれるんですね?」


えみりはコクンと頷いて、今度は真っ直ぐに彩子の目を見た。


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