《TABOO④》ベッド
*
「こうしたかった」
ホテルの一室。部屋に入るや否や、後ろから抱きしめられた。
私の肩に顔を埋め、首筋に唇を這わせ、耳たぶをそっと噛む。
リョータの吐息にくすぐられるだけで、体が火照る。
今日はただの出張のはずだった。
高校の同窓会で元カレのリョータと再会して以来、彼氏がいるにもかかわらず、時折メールをするようになっていた。
昨日、リョータからのメールに、都内へ出張することを書いて返信したら、じゃあ会おう、ということになったのだ。
じゃあ、会おうって。
この人は自分の立場をわかっているのだろうか。
今や人気モデルなのに。
人の目だってあるだろうに。
それに、私に彼氏がいることだって、知っているのに。
リョータはスーツのボタンをはずし、やや乱暴に脱がせた。
少し焦っている感じが、私を求めてくれている感じが、たまらなく嬉しい。
彼氏とのセックスだって感じないわけではない。嫌なわけでもない。だけど、こんな風に野性的に求められることも、ない。
リョータの首に腕を回し、自ら唇を重ねた。
何度も角度を変え、舌を絡み合わせる。そして、もっと欲しくなる。
ベッドに押し倒された。
彼は野獣のようにブラウスを剥がし、手を這わせ、舌を這わす。
熱を帯びた体は、正直に反応する。
彼がパンストを脱がせようとした時、まだ履いたままだったパンプスを脱がせて床に捨てた。
リョータに買ってもらったばかりのパンプス。
情熱的になりながらも、粗末に扱わないで、と思っていた。
仕事の後、待ち合わせ場所に着いた時、ヒールが見事に折れてしまった。
彼は素早く私をおんぶし、そして車の助手席に乗せた。
新しい靴を買うために。
他愛もない話をしながら、買い物をした。
「あれ、リョータじゃない?」なんてひそひそ声を聞きながら。
こういうのが記事になってしまうのでは?そんな不安をよそにリョータは視線などもろともせず、堂々としている。
ちらりと見上げると、私の思っていることを察したのか、
「高校の同級生と買い物して、何が悪いの?」
と言って、にんまり笑った。
リョータの熱を感じながら、思う。
どうして高校生の時、別れてしまったのだろう。
モデルにスカウトされ夢を語るリョータと、受験勉強一色で将来が不安でたまらなかった私。
弱かったな。
夢を語る眩しい彼を遠ざけたかっただけ。自分がみじめに思えるから。
あの時、彼の夢を素直に応援できる強さがあれば……。
「愛してる」
リョータが耳元で囁いた。