《TABOO④》ベッド

「こうしたかった」

ホテルの一室。部屋に入るや否や、後ろから抱きしめられた。

私の肩に顔を埋め、首筋に唇を這わせ、耳たぶをそっと噛む。

リョータの吐息にくすぐられるだけで、体が火照る。



今日はただの出張のはずだった。

高校の同窓会で元カレのリョータと再会して以来、彼氏がいるにもかかわらず、時折メールをするようになっていた。

昨日、リョータからのメールに、都内へ出張することを書いて返信したら、じゃあ会おう、ということになったのだ。

じゃあ、会おうって。

この人は自分の立場をわかっているのだろうか。

今や人気モデルなのに。

人の目だってあるだろうに。

それに、私に彼氏がいることだって、知っているのに。



リョータはスーツのボタンをはずし、やや乱暴に脱がせた。

少し焦っている感じが、私を求めてくれている感じが、たまらなく嬉しい。

彼氏とのセックスだって感じないわけではない。嫌なわけでもない。だけど、こんな風に野性的に求められることも、ない。

リョータの首に腕を回し、自ら唇を重ねた。

何度も角度を変え、舌を絡み合わせる。そして、もっと欲しくなる。

ベッドに押し倒された。

彼は野獣のようにブラウスを剥がし、手を這わせ、舌を這わす。

熱を帯びた体は、正直に反応する。

彼がパンストを脱がせようとした時、まだ履いたままだったパンプスを脱がせて床に捨てた。

リョータに買ってもらったばかりのパンプス。

情熱的になりながらも、粗末に扱わないで、と思っていた。



仕事の後、待ち合わせ場所に着いた時、ヒールが見事に折れてしまった。

彼は素早く私をおんぶし、そして車の助手席に乗せた。

新しい靴を買うために。

他愛もない話をしながら、買い物をした。

「あれ、リョータじゃない?」なんてひそひそ声を聞きながら。

こういうのが記事になってしまうのでは?そんな不安をよそにリョータは視線などもろともせず、堂々としている。

ちらりと見上げると、私の思っていることを察したのか、

「高校の同級生と買い物して、何が悪いの?」

と言って、にんまり笑った。



リョータの熱を感じながら、思う。

どうして高校生の時、別れてしまったのだろう。

モデルにスカウトされ夢を語るリョータと、受験勉強一色で将来が不安でたまらなかった私。

弱かったな。

夢を語る眩しい彼を遠ざけたかっただけ。自分がみじめに思えるから。

あの時、彼の夢を素直に応援できる強さがあれば……。






「愛してる」

リョータが耳元で囁いた。







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