キュンキュンキューン!
ぼーっ
古城らん(こじょう らん・十七歳・男)「るん――数一の教科書貸してくれ」
古城るん(こじょう るん・十七歳・男)「テストの答案を返されたばかりだっていうのに、また、赤点とったの?」
らん「お守りばれなかっただけマシなんだよ。おれはがんばったのー!」
るん「お守りってカンニング? カンニングがんばって赤点とったの?」
らん「うっ……おまえは兄の苦悩を知らない!」
るん「なーにが苦悩だ。どーせ、一夜漬けなんだろ。数式教えてやるから感謝しろ」
らん「数式の暗記はすんだ。あとは応用だ!」
るん「暗記したって、数式は使えなきゃ、応用解けないよ?」
らん「ナニソレ、何かの呪文?」
るん「らあーんんー!」

聖タクト(ひじり たくと・十七歳・男)「るーんー! 奇跡だよ、オレ、物理で八十点取ったよー」
 タクトは大手を振って帰れると言うので喜んでいた。
 いつも足を引っ張ると言う物理をるんが教えてやったのである。
 平均七十五点以上取れば、成績上位者入りである。るんは立派に役目を果たしたのだ。
るん「よーし、庶民の味、おかかおにぎりをやろう」
タクト「るん! 愛してる!」

らん「るーんー! 応用問題解けたよー」
るん「あん? いっこだけ? ナにやってんだバカ兄貴!」
らん「でも平均以上はとったんだよー」
るん「なんだこれ、サービス問題の穴ウメばっかじゃねーか」
らん「これでやっと進級できるよおおー」
るん「決めた! オレ、金輪際、兄貴の面倒はみねえ!」

 そよ風が吹き抜けていく。
 大学付属の図書館の前で。
 いつにもまして、ボーっとした、るんのすがたがありましたとさ。
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