イケメンSPに守られることになったんですが。
「そんなこと、言わないでください。価値があるとかないとか、誰がそんなこと決めるんですか」
大きな手が、後頭部を優しくなでる。
「誰だって、幸せに生きる権利があります。
俺たちはそれを守るためのSPです。
言ったでしょう、俺が必ず守るって」
力強い声が、全身を包んで温める。
誰だって、幸せに生きる権利が……ある。
「俺はあなたのファンですよ、中園さん。
あなたの作品を好きだと言ってくれる人たちが、あと何人いると思いますか?」
「……でもそれは、作品だけで、私を好きなわけじゃないもん」
「そうですか?しょせんネット上のつながりでしょうけど、じゃああなたは他の作家さんが死んでしまっても何も感じませんか?」
「…………」
そんなの、やだ。
毎日の家事と育児でくたくただって言ってた主婦の作家さんも、夢は書籍化って言って仕事しながらがんばってる作家さんも、最近大学の受験勉強で更新できてない作家さんも。
顔も本名も知らない人たちだけど。
みんなみんな、できることなら幸せでいてほしい。
「……死んでもいい人間なんて、いないはずです」
「はい……」
「だから、俺はあなたを守ります。
たとえあなたが死にたがっても、全力で阻止します」
「……はい……」
「だからもう、そんな悲しいことは言わないでくださいね。
約束ですよ」
亮司さんは片手で私の肩を抱いたまま体を少し離す。
そして、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの私の顔の前に、その小指を立てて見せた。