イケメンSPに守られることになったんですが。
「尋問するなら中園さんじゃなくて、容疑者の方だろう」
「それはあとで行う予定だ。
誰かさんがやつらを気絶させて、しかも銃で傷を負わせてくれたおかげで今暇なんでな」
「マルタイを守るのが仕事なんだからしょうがないだろう!」
亮司さんがトマトまみれになったコートを脱いだ姿で、怒鳴った。
どうやら亮司さんも、篠田さんに対してだけは、大人になれないみたいだ。
「しかし確かに、このぼんやりした小娘が命を狙われるくらいの影響をどこかへ及ぼした可能性は低いな。
ということは、他に考えられるのは……」
篠田さんも詳しくは教えてくれないが、どうやら私を狙っているのはSCSとは違う団体だと思っているらしい。
「何か見てしまったか……」
「はい?」
「殺人現場とか、麻薬の密売現場を目撃していないか?」
篠田さんは、とうとう一般人である私に対しての敬語を捨てた。
別にいいけど……すみませんね、ぼんやりした小娘で。
「そんなの目撃してたら、普通通報するでしょ」
「ぼんやりしてるから、通りかかったけど気づかなかっただけとか。
よく思い出せ」
いくらぼんやりしてても、目の前で殺人現場を見て気づかなかいなんてことあるか、普通?
「ありません……って、あ」
「なにか思い出したか?」
「目撃って言えば、先月起こった地下鉄の爆発事件。あれ、私その近くにいました」
篠田さんと亮司さんが顔を見合わせる。
先月の頭、都内の地下鉄のある駅で、不審物が爆発するという事件が起こった。
亡くなった人はいなかったけど、当然怪我人は出た。
パニック状態の人の波に押されて転んだ、私みたいな人を合わせると、怪我人は相当な数だっただろう。