イケメンSPに守られることになったんですが。


……なんて思ったのが間違いでした。



「っ、ううっ……」



最初はふわふわしていい感じだなーと思って、調子に乗って缶ビールを一本開けてしまった私は……。


小説を書きながら、号泣していた。


そう、読みながらじゃなくて書きながら。



「ど、どうしました?」



部屋の隅にひかえていた亮司さんが心配そうに言う。



「なんか、悲しくなって……」



とりあえず新作を書いてみようと思って、彼氏にふられて非リア充になった女の子が、二次元の男の子に恋をして、その世界にトリップ……なんてラブファンタジーを書こうとしていたのに。


主人公が彼氏にふられるまでを書く過程で、自分がふられたことを思い出して、悲しくなってしまったんだ。


普段も自分の実体験を小説に織り交ぜることはあるけれど、こんなことは初めて。


きっと、お酒の魔力のせいだ。



「くっそぅ……」


「中園さん」


「もうだめ、書けない!」



もう、こんなに頭がぐちゃぐちゃのままじゃ、何も書けない。


素敵な男の人との恋さえ、妄想する力がなくなってきてる。


妄想できるのって、普通の生活が成り立っていてこそだったんだなあ……。


今まで非常事態でも食べられたし眠れたから、自分は大丈夫だと思っていたけど。


事件が複雑化してしまって、とうとう壊れちゃったんだろうか。





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