イケメンSPに守られることになったんですが。


パソコンが涙と鼻水で汚れていく。


それも構わず、私は突っ伏したままだった。



「相手は男子トイレから出てきた瞬間だったみたいれした。

私の顔を見ると、『げっ!!』って顔したんれす。

転んで膝をすりむいて血を流している私に手を差し伸べることもなく、彼は人波に紛れて行ってしまいました」


「そう……ですか」


「ひどいれすよねえ。

たったひとこと、大丈夫?って言ってくれたら、それだけで良かったのに。

もう、帰ってきてなんて言うつもりもないのに」



タレ目の、だらしない顔の男。


まるで亡霊でも見たかのような目で私を見てた。



「あいつ、いつの間にか彼氏になってて、いつの間にか私の部屋に寄生してて、突然いなくなったんれす。

聞いてた職場に聞いてみたけど、そんな人はいないって言われちゃった。

名前がウソだったのか、職場がウソだったのか、わからなかった。

今となっては、全部がウソだった気がする……」



1年前。


ちょうど、小説サイトに登録したのと同じくらいの時期だ。


よく通っている図書館で、私は一人の男と出会った。


名前はカズヤ。それが本名だったかどうかは、もうわからない。


彼はよれっとしたダウンジャケットを着て、図書閲覧用のイスで、寝てた。


気味が悪いなと思ったけど、運が悪い事に、その日はその男の隣のイスしか空いてなかったんだ。


新しく出たファッション誌を持って、私はその席に腰かけた。


新しい雑誌は、ある一定期間をおかないと、貸し出しされないからだ。


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