イケメンSPに守られることになったんですが。
「あのときは、まだ興味あったんらよねー。女としての自分に……」
服や化粧品を買ったら、雑誌を買う余裕はない。
だから他の本を借りに来たついでに図書館で読んで、素敵な服を見つけたら、それと似た安い服を探す……。
それが、私の休みの恒例行事だった。
気味が悪いけど、そのまま寝てくれてればいいや。
私はそう思って、男を放置して雑誌をめくっていた。
すると……。
『……あんた、三島好きなの?』
幻聴かと思った。
ぼそりと、かすれた声が隣からしたからだ。
おそるおそるそちらを見ると、今まで寝ていた男が、私の借りようと思って横に置いていた本を見ていた。
『三島由紀夫。好きなの?』
男は再度、そう聞いた。
タレ目の、いかにもだらしなさそうな顔。
でも、少し可愛かったんだ。
なんでそんな風に思ったんだろう。
『好きじゃないです。
文が綺麗だとは思うけど、話はつまんない』
私は素直に返事をした。自分でも何でそうしたかはわからない。
今思えば、寂しかったのかもしれない。
休日に誰かと話をすることが、すごく久しぶりだった。
『でも読むんだ。変な子』
男は私の顔を見て、ぷっと笑った。
そんな出会いから数日……
カズヤは何故か、私の部屋に入り浸るようになっていた。