イケメンSPに守られることになったんですが。


「過呼吸……!」


「えっ」


「新城、紙袋だ!……そっちだ、その箱に入ってる!」



突然息が苦しくなって、目の前が霞む。



二人のSPの声が、やけに遠くに聞こえた。



「中園さん!ゆっくり息をしてください!」


「……っ、……ぁ、は……っ」



口元にかさりとした何かが押し当てられる。


言われるがままゆっくり呼吸をしていると、息はだんだんと落ち着いてきた。


首をしめられたような苦しみに、生理的な涙が落ちる。



「大丈夫、大丈夫ですよ」


「……だ、やだ、見ないで、もうやめて、もう……っ」


「すみませんでした。すみません……。

もう、見ませんから。

もう、大丈夫ですから」


「……ぅあっ、ああああああああ……っ」




何が大丈夫なの。


今までは、ただ変な男にはまった自分が悪いのだと思うことができていたのに。


女としての自信をズタボロにされて全て失って、それでもなんとか自分ができることを見つけて、がんばってきた。


寂しかったけど。


死ぬほど、寂しかったけど。


生きてたら、きっとまた良いこともあるって。


笑って話せる思い出になる日が来るって。


そう、がんばってきたのに……。


カズヤ。


あなたは、私から全てを奪っていくんだね。


愛してくれてなくてもいいよ。


でも、


殺すほど憎んで……ううん、どうでもいい存在だったなんて。


悲しすぎるよ。


< 170 / 438 >

この作品をシェア

pagetop