イケメンSPに守られることになったんですが。
先生は淡々と言うと、淡々とカルテを書き、「はい終わり」と言った。
なんだか拍子抜け……。
「なにか質問はありますか?」
「いえ……もっと根掘り葉掘り、色々聞かれるのかと思ってました」
「あー、そう。そうね、カウンセリングが進めば色々話してもらうことになると思うけど……。
今会ったばかりの僕に、全部あなたの気持ちを洗いざらい話せって言ったって嫌でしょう?僕だってそんなの、無理無理」
……たしかに。
……適当に見えて、やっぱりわかってるんだ……すごい。
「カウンセリングか投薬治療か選ぶこともできるよ。
別に今決めなくてもいいから、また暇な時にいらっしゃい」
「……はい」
こうしてあっけなく、私の心療内科デビューは終わった。
薬局で薬をもらい、車に乗り込むと、亮司さんがエンジンをかける。
「あの先生はね、俺の解離性同一症をずっと面倒見てくれてる先生なんですよ」
「え……」
車は発車し、亮司さんのマンションへと向かう。
「おもしろい先生なんですよ。
別に無理に治さなくていいって言われて。
それでけっこう楽になりましたね」
亮司さんは遠い過去を思い出すような目で、前を向いていた。