イケメンSPに守られることになったんですが。


佐々木さんはヘアカタログを広げながら、話しかけてくる。



「根元を染めるだけでも良いんですけど、結構伸びてますよね。

前にカットされたのはいつ頃ですか?」


「忘れました」


「この伸び方からすると、半年くらいかな……ご希望の髪形ってありますか?」


「……お任せします」


「そうですか。うーん……」



佐々木さんはその美しい眉間にシワをよせて考える。


ああ、意地悪してしまったみたい。自分が嫌いだ。


お任せしますなんて、自分の好みをよくわかってくれている人にだけ言っていいセリフ。


初対面で言われたら、さぞかし困ることだろう。


でもしょうがない。やりたい髪形なんか、ないんだもん。


ちなみにいまは、肩につくくらいの長さ。


それが伸びてボサボサだ。



「じゃあ、これぐらいでどうですか」



佐々木さんがヘアカタログを見せてくれる。


そのページでは、ショートボブにした女優さんが笑っていた。


……嫌味かッ!!



「……ショートって、顔が小さくてかわいい人しか似合わないじゃないですか。

適度に隠れる方が良いんですけど」


「やだ中園さん、髪で顔が隠れてるのなんて、ホラー映画くらいですよー」



だから適度にって言ってんじゃん。


誰が全部隠すって言った。


目だけは出てないとスマホが見れないじゃん!


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