イケメンSPに守られることになったんですが。
『……どうした。元婚約者に彼氏がいるって聞いて、急に寂しくなったか』
そんなんじゃない。
『じゃあ……』
やめろ。
違うんだ。
ただ俺は、彼女の力になってやりたいだけだ。
たかが警護のために一緒にいるだけ。
公安が事件を解決したら、赤の他人に戻るんだ。
そのとき、彼女がひとりでもまっすぐ歩けるように。
できるだけのことを、してやりたいだけだ。
『……それは麻耶に、同情しているからか?
それとも……。
子供のときの自分の姿が、重なって見えるからか?』
…………。
たしかに、それは両方とも、ある。
『……けどそれは、デコチューした理由にはならねえぜ?』
デコチュー言うなぁっ!!
俺だって、なんであんなことをしてしまったのかわからなくて、猛烈に後悔しているんだ。
あんなことはするべきじゃなかった。
中園さんの心をいたずらに乱すだけだ。
何がおっさんの呪いだ。
『認めちまえよ』
だめだ。
『ただ、あいつの上目遣いにやられたって』
違う、違う、違う!
俺はSPだ。32歳の、いい大人だ。
そんな俺が、ひとまわり近く年下の女の子……しかもマルタイに、そんな、おかしな感情を抱くなんて……。
あるはずがない。
あっては、いけないんだ。