イケメンSPに守られることになったんですが。
キッチンで黙々とシンプルな料理を作る。
酒に酔って、誰も聞いていないのに過去を暴露し、号泣してそのまま寝る。
風呂上りに、ノーブラでそのへんをウロウロする。
妄想癖があるらしく、たまに口を開けたまま宙をにらんでぼーっとしている。
そんな彼女の姿が、この部屋からなくなってしまった。
なくなって初めて、それがとんでもなく愛しいものだったことに気づく。
たとえ他の人間にはそう見えなくても。
彼女は俺の心の癒しであり、支えだった。
そんな彼女を、自分のものにしようと思えばできたのかもしれない。
だけどどうしても、できなかった。
俺に深く関わったって、ろくでもない結果になるに決まってる。
だからって……あんなヘタクソな突き放し方があっただろうか。
彼女の瞳が絶望の色に変わり、ぼろぼろと涙を流した光景が、頭から離れない。
もうムリだ。
こんな俺が、SPを続けていいわけない。
人の命を守るだと?
好きなひとを、傷つけないように遠ざける、そんなこともできない俺が?
笑ってしまう。
俺にできることなど、何一つありはしないんだ……。