イケメンSPに守られることになったんですが。


……あ、れ……?


俺、今なんて思った……?


まるでリョウみたいな……。


……ちょっと待て。


撃たれる瞬間までこの体を使っていたリョウはどこへいった?


どうして俺が、こんなに苦しい思いをして、冷たい道路に横たわっているんだ。


リョウ。


どこへ行った。


呼びかけても、返事はない。


リョウ……?


俺の分身。


俺の抑圧された怒りや欲望の塊。


どこへ行った……?



『俺がいなくても……もう、大丈夫だろ。

お前はあいつのおかげでやっと、自分の負の部分と向き合うことができた。

俺の仕事は、これで終わりだ。

麻耶に……よろしくな』



リョウ……!?


最後にそんな言葉を残し……。




彼の声は、聞こえなくなった。






閉じていたまぶたを明ける。


歯を食いしばり、なんとか体を起こそうと試みる。


リョウ……。


今まで、すまなかった。


本当にありがとう。


俺は、俺の醜い怒りも、汚い欲望も、どうしようもなかった寂しさも、全て受け入れる。


俺の全てで、麻耶を守ってみせる。


だから、お前の力を与えてくれ……!



「ぐっ……ああ……っ!」



痛みを凌駕する、キミへの想い。


俺はついに、立ち上がった。


その瞬間……。


自分の心の中に、何かが吸収されていくような感覚が起こった。


それは、とても温かくて。


気づけば、一筋だけ、涙がこぼれていた。




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