イケメンSPに守られることになったんですが。
煙はもくもくと、私たちの足元に絡み付こうと追いかけてくる。
「なるべく息を吸うな!
催涙弾だ!」
そ、そんなこと言われてもぉぉぉ。
とにかく背広の袖で口を覆ったまま、亮司さんの手を離さないように走る。
やがて亮司さんが侵入してきた窓が見えた。
すると……。
「つかまれ!」
「えっ、わぁぁっ!」
亮司さんが残った最後の体力を振り絞り、私を米俵みたいに抱き上げる。
ど、どうするつもりなの!?
「目と口をを閉じてろ!」
亮司さんはそう言うと、全力で閉じられたままの窓に向かって走る。
あまりの速さに揺さぶられて、めまいがしそうになった瞬間……。
──ダンッ!
亮司さんの大きな靴が思い切り床を蹴り、私を抱いたまま宙に浮いた。
ぶわりと重力に逆らい、私たちは地上から高く離れる。
思わず目を閉じると、次の瞬間……。
──ガシャァァァァン!!
大きな音がして、体が地面に転がった。
亮司さんが私を抱いたまま、ガラスを突き破って脱出したんだ……!
その直後、薄く開けた視界の端に、窓から火と煙が爆音とともに吐き出されるのが見えた。
一瞬でも脱出が遅れたら、あれに巻き込まれていたかもしれない……。
亮司さんは体力の限界だったのか、彼の腕は転がりながら私から離れてしまった。
ひとり地面に投げ出された衝撃で、頭がクラクラする。
それでも私は、離れてしまった亮司さんの手を求めて、無理やりに体を動かす。
「…っ、いた……っ」
体を起こそうとして地面に手をつくと、枯れた草と乾いた土の中にガラスの破片が混じっていて、私の手のひらを刺した。
「……っ……。
そのまま、動かないで……」
近くにいた亮司さんはなんとか起き上がり、体をはたく。
すると、ガラスの破片がぱらぱらと音を立てて落ちた。