イケメンSPに守られることになったんですが。
私は亮司さんをリビングに連れて行く。
「今回はね、恋愛ものなの」
「へえ。どうせイケメンがたくさん出てくる、妄想爆発物語だろ?」
「あっ、バカにしてるー」
「してないよ。見せて」
くすくすと優しく笑う亮司さんの大きな手に、私は今日届いたばかりの初校を渡した。
実は書籍化のお話をもらったのは2ヶ月前。
だけど、なかなか亮司さんが帰ってこないのをいいことに、改稿中も私はこのことを、ずっと秘密にし続けていた。
……絶対、驚くと思ったから。
「……っ、げふっ、げふん!」
初校のタイトルを見て、亮司さんは何も飲んでいないのに突然咳き込みだした。
「な、なんだこれ……」
「私たちの生きた証を、残そうと思って。
あのテロ事件を題材に書いてって、編集部の人に言われてたし」
「だからって、この題名……」
いいじゃない。
だって、本当のことだもん。
それに、これは私の中で、一番素敵で忘れられないストーリーなんだもの。
続編も、私たちの中だけで死ぬまで続いていくんだ。
私は亮司さんの手から初校を奪った。
その表紙に書かれているタイトルは……。
『イケメンSPに守られることになったんですが。』
【end】