イケメンSPに守られることになったんですが。


だけど、今これを使う彼氏がいないのは、本当。


自分で使っちゃえばいいんだけど、いつも忘れて新しいものを買ってきてしまう。


そう、忘れていただけ。


これを使うはずだった人が帰ってくることを願っているわけでは、決して、ない。


頭を切り替えて立ち上がると、洗面台の鏡に、仕事着のスーツのままの自分がうつった。


疲れていて、一年中ある青クマが目だって、とっても醜い。


思わず目を逸らして、鏡に背を向けた。



「……着替えていこうかな。
これでは、ちょっと……」


「ああ、疲れますよね、それじゃ」


「じゃあ、外に……」


「出て行っても透視できてしまうんで、ここで後ろを向いていた方が安心ではありませんか?

さすがに俺も、真後ろは見えないんで」



私はふっと笑ってしまった。


それはそうだ。透視はできるけど、後ろに目がついてるわけじゃない。


高浜さんは冗談を言ったつもりなんだろうか。


優しく笑うと、すぐに玄関の方を向いてしまった。


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