イケメンSPに守られることになったんですが。
左手の親指の爪を噛む。
考え事をする時の癖だ。
とても格好の悪いことであると私も自覚しているのだが、そもそも無意識なのが癖というものなので、なかなかやめられない。
スマホの画面を凝視したまま、駅までの道を急ぐ。
1年近く通った道だ。目をつむってても歩ける。
そんな傲慢な思い込みが間違いだった。
「ぶっ!!」
顔面に、思いがけない衝撃が走る。
まばたきをすると、男もののコートが視界に映った。
「す……っ」
すみませんと言って、何歩かあとずさる。
そのはずだったのに。
「!?」
私は、言葉を失った。
ぶつかった男の左腕が、背中に回ったのだ。
まるで、抱きしめるように。
何……!?もしかして変態!?
顔を胸に押し付けられて、周りも見えない。声も出せない。
ぞっと、背中が恐怖で震える。
まだ持っていたスマホをコートのポケットにしまい、抵抗しようとした。
その時だった。