イケメンSPに守られることになったんですが。


「すみません、こんなことになってしまって」



ホテルをチェックアウトし、高浜さんの自宅に向かう車の中で、ぼそりと低い声が落ちた。



「いえ、こちらこそ……ご自宅なんて、迷惑ですよね。すみません」


「迷惑なんてことないです。
あなたは何も悪くないんだから、謝らないで下さい」



高浜さんの低くて優しい声が、すうっと胸に染み込んでいく。


うう、人の情けが身に染みる。


そういえば、さっきも抱きしめてくれたっけ。


高浜さんって、ほんとに優しいよね……



「お父さんがいたら、こんな感じだったのかな……」


「え?」


「いえ、何でもありません」



私は父親の顔も母親の顔も見たことが無い。


高浜さんみたいなお父さんがいたら、良かったのにな。


……でも本人に言ったら失礼だよね。お兄さんならまだしも。



「このまま自宅へ直行しますが、良いですね?」



赤信号で、高浜さんが急にこちらを見る。


ぼんやり横顔を見つめていた私の心臓が、ぴょこんと跳ねた。


< 72 / 438 >

この作品をシェア

pagetop