イケメンSPに守られることになったんですが。
「い、いません、彼女なんて」
亮司さんは顔を赤くしたまま、口元をぬぐった。
「嘘だあ……だって、」
「ええ、皆まで言わないで下さい。
過去の遺物がこんなに残っている事を、俺自身忘れていたんです」
「過去の遺物?」
「あなたが俺に彼女がいると判断した、証拠の品の数々です」
ほおお、さすが警察官。
でも証拠の品とかっこつけて言っても、それは可愛いマグカップとえげつないアレだけども。
「篠田が……言ってたでしょう。
二人で住む予定が、一人になったって」
「あ……」
「そういうことなんです。
婚約者がいましたが、一年も前に逃げられてしまいました。
それからも忙しくて、引越しも片付けもできないままで」
亮司さんは、ピザと一緒についてきたコーラをこくんと飲んだ。
その顔は静かに笑っているけれど、言葉のはじっこに寂しさを感じる。
婚約者。
一度は、結婚を決めた人。
そんな人に逃げられただなんて……