キスの意味を知った日

それから、ワイワイと他愛もない話をして盛り上がる。

歯が浮くようなセリフで持ち上げられるけど、そんなの誰にでも言うリップサービスだと知っているから、愛想笑いで返す。

すると。


「お~駆! 久しぶり!」


何の前触れもなく、私の前に座っていた純が急に席を立って右手を挙げた。

一斉にみんなその視線の先を見る。

すると、その先にはスーツ姿の男性が1人立っていた。


「なにこれ」


細身のスーツ姿の彼が私の後ろで仁王立ちしている。

ひどく不満そうな顔で。


「高校の時の後輩とバッタリ会って、一緒に飲む事になったんだよ」


酷くご機嫌な純が、駆と呼ばれる彼の横まで行き肩を組んでいる。

そして、今にも帰りそうな彼を強引にも座らせた。

さっきの癒し系男子が丁度席を外していたので、必然的に空いていた私の横に。


ふんわりと香る香水の香り。

なんだろ。ブルガリかな。
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