キスの意味を知った日
息も詰まるような沈黙が会議室に満ちる。
誰も助け船なんて出してくれるはずもないのは分かっている。
だから、グルグルと思考回路をフル回転させて言葉を選ぶ。
「――その……。自己処理を」
悩んだあげく、オブラートに包みまくった言葉がこれだった。
不安げにチラリと櫻井さんに視線を投げるけど、当の本人は表情一つ変えずに私を見つめていた。
「それで?」
「はい?」
「まだ他にあるだろ」
他?
あるとすれば昨日の手紙事件だけど。
それとこれとは関係あるのかな?
というか、なんで知ってるんだ。
悶々とそんな事を考えあぐねながら、じっと櫻井さんの顔を見つめる。
すると、私が何を考えているのか分かったのか。
「昨日のエレベーターの中で、様子がおかしかったから」
と、告げた。