キスの意味を知った日
チラリと横を見ると、強引に渡された飲み物のメニューを無表情で見ている彼。
整った顔が、温かい照明の色に映し出されている。
うん。
意外といい男だ。
いかにも仕事できます! って感じ。
結局すぐにメニューから目を離した彼は、後ろを通って行った店員にビールを注文していた。
一瞬目が合ったけど、お互い興味がない様子で目を逸らした。
「久しぶりだな~駆。少し痩せた?」
「ん? あ~、ここ最近忙しかったからな」
本当に久しぶりなのか? と思うような淡白な会話が男達の間で繰り広げられる。
その様子をお酒を飲みながら聞いていると、おもむろにポケットから煙草を出して、「いい?」と煙草を持ち上げて素っ気無く聞いてくる、彼。
コクンと頷くと、慣れた手つきでタバコをふかしだした。
個人的に男の人のタバコを吸う姿は好きだ。
なんだか無防備な感じがして。
まぁ吸う人にもよるけど。
彼は合格。