キスの意味を知った日
◇◇◇
「お願いします」
「ん」
そう言って、身慣れた車に乗り込み車を走らせ始めた櫻井さん。
外はまだ、夕焼け空だった。
こんな早くに帰るの、久しぶりだ。
「これからは極力、日が昇っているうちに帰れよ」
警察に被害届を出す。という彼に断固として拒否をした私に、半ば呆れた顔の櫻井さん。
だって警察に言おうモノなら、確実に仕事に支障がでる。
それに、ありもしない事を噂されるのも考えただけで頭が痛い。
「なんでそんなに仕事に食らいつくんだ?」
「上司らしからぬ発言ですよ」
そう言う私に、苦笑いを浮かべた櫻井さん。
それに、答えなんて分かっているくせに。