キスの意味を知った日



















「うわぁ~綺麗!!」


静寂の中に、私の意気揚々とした声が響く。

そんな私の姿を見て、後ろからノロノロ歩いてきた櫻井さんはポケットに手を突っ込んだまま目を細めた。


「久しぶりに見るといいもんだな」

「でしょ!」

「ドヤ顔やめろ」


呆れたような顔になった櫻井さんにニッコリ笑う。

お酒のせいか、妙に気分がいい。


あの後、永遠と仕事に関する事を話し尽くした。

いつもは言葉数少ない櫻井さんも、仕事の話になると会話が途切れる事はなかった。

話してみて分かった事は、櫻井さんと私は仕事に関する考えが酷く似ている事。

まぁ、お互い仕事人間だから分かり切っていた事だけど、話していてとても勉強になったし楽しかった。


食事を終え居酒屋を出た後、そのままのノリと酔った勢いで、寄り道しません? と聞いてみた。

断られるのを覚悟で聞いたけど、意外にすんなりOKが出たから驚いた。


よくドライブに行くのか慣れたように車を走らせ、着いたのは山。

どんどんクネクネした道を進み、開けた所で車を停めた。

そして眼下には、キラキラと輝く夜景が一面に広がっていた。


「よく来るんですか? ここ」

「昔はな」


そう言って煙草に火を付けた櫻井さん。

真っ白な煙が宙を舞う。
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