キスの意味を知った日

本当の私は弱くて、必死に寂しいと叫んでいた。

誰かに、側にいてほしいと叫んでいた。

仕事に没頭すればするほど、家に帰った時寂しさが襲った。

虚しさが、首を絞めた。


「側にいてほしいっ。私を必要として欲しいっ」


でも、傷つくのが怖い。

また恋をして、愛して、裏切られるのが怖い。

捨てられるのが、怖い。


次転んだら、もうきっと起き上がれない。

それだけは分かる。


だから歩く事を止めた。

転ばない様に。


あんな恋、忘れてしまいたい。

そう願っているのに、私は今も過去の恋に囚われて前に進んでいない。

見えないようにしているだけで、瞼の裏ではあの人の事を忘れていなかった。

いつまでも、恋をしないと言い張っているソレが証拠。


「恋なんてしない。そう決めたのに。寂しいって思ってしまう自分が嫌っ! 弱い自分が大っ嫌いっ!!」


こんな自分、大嫌いだった。

1人で生きていくと決めたのに、心は寂しいと叫んでいる自分が。

この期に及んで、誰か側にいてほしいと望む自分が。

大嫌いだった。

どうしようもなく、大嫌いだった。
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