キスの意味を知った日
「あのっ! る、瑠香さん、ですよね?」
朝礼が終わって、席に戻ろうとした時、突然そう話しかけられた。
思わず足を止めて、振り返る。
すると、そこには先程自己紹介していたフレッシュピチピチな23歳の『日向』がいた。
先程同様、朝日に負けないくらい輝く瞳で私を見つめている。
っていうか、瑠香?
今、瑠香って言ったよね?
「そうだけど。どうしたの?」
一瞬疑問が湧いたけど、流した。
ニッコリと笑って、日向に向き直る。
すると、今にもその場で飛び跳ねそうな勢いの日向が、前のめりになって言葉を続けた。
「あ、あの! 梨恵さんから、また飲もうね! って伝言預かってきました」
「梨恵から?」
「あの、私関西支社にいた時、梨恵さんにお世話になって! こっちに出向が決まった時に、梨恵さんに同期がいるからって聞いて」
「あ~。なるほどね」
「あの、よ、よ、よろしくお願いします!」
そう言って、ニッコリ笑いながら深々と頭を下げた日向。
その頬には笑窪まである。
どこか不器用ながらも、真っ直ぐなその姿勢と笑顔に思わず笑ってしまう。
美咲の言ってた通り、可愛い子だ。
だけど、私の思っているような子じゃないと思う。
素直で、真っ直ぐな子だ。