キスの意味を知った日
「そっか、関西支社だったもんね。ありがと。梨恵にも言っておく」
「いえ! あ、あの、瑠香さん……聞いていた以上に美人でビックリしました!」
「え?」
「あ、瑠香さんだなんて、馴れ馴れしくすいません。ま、松本さん!」
「別にいいよ、瑠香で。梨恵がそう呼んでたんでしょ?」
「あ、はい! 酒飲みでオッサンみたいな面白い同期が2人、こっちにいるって」
「梨恵のやつ、何吹き込んでるのよ」
「不安だったんですけど、梨恵さんの話聞いてホッとしたんです!」
「ん~まぁ、関西支社とはいろいろ違って戸惑うと思うけど、何でも聞いてね」
ニッコリ笑ってそう言うと、パァっと顔が一気に明るくなる日向。
分かりやすい性格だなと思って可笑しくなる。
嬉しそうに笑った日向は、会話もそこそこに次は美咲の元へと駆けて行った。
きっと梨恵から伝言を頼まれているんだろう。
相当、梨恵も可愛がっていたんだな、この子の事。
そう思うと、なんだか可愛い妹を梨恵から託されたような気持ちになる。
だけど、全力投球してくるあの明るさに、若干押され気味なのは確か。
なんだか圧倒されてしまった。
これも若さの力なんだろうか。
でも、何故か憎めない性格だ。
無邪気な妹みたいな感じ。
自分にも、こんな時があったんだなと思うと。
妙に年を取った気分になった。