キスの意味を知った日

「あれ? 瑠香さん、まだ残ってたんですか!?――櫻井さんもっ!」


言葉の最後の方は、ピンク色の声でそう言った日向。

相変わらず、何とも分かりやすい子だ。

頬をピンクに染めたまま、トコトコと小さな体で私達の元へ駆けてきた。

そして、お疲れ。という櫻井さんの言葉に、お疲れ様です! と壊れた玩具みたいにお辞儀をしていた。


「遅かったけど、何かあったの?」

「あっ! いえ……その……道に迷っちゃって」


少し恥ずかしそうにそう言う日向は、ハムスターみたいだった。

モジモジと下を向いて、目を泳がせた。


まぁ、地元もこっちじゃないし、つい最近まで関西にいたんだ。

迷って当たり前かも。

私も初めて上京した時は、電車の乗り換えなどで苦労したもんだ。


おまけに、美咲が言うのは、日向はかなりの方向音痴って言ってたし。

納得。
< 212 / 353 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop