キスの意味を知った日
「あれ? 瑠香さん、まだ残ってたんですか!?――櫻井さんもっ!」
言葉の最後の方は、ピンク色の声でそう言った日向。
相変わらず、何とも分かりやすい子だ。
頬をピンクに染めたまま、トコトコと小さな体で私達の元へ駆けてきた。
そして、お疲れ。という櫻井さんの言葉に、お疲れ様です! と壊れた玩具みたいにお辞儀をしていた。
「遅かったけど、何かあったの?」
「あっ! いえ……その……道に迷っちゃって」
少し恥ずかしそうにそう言う日向は、ハムスターみたいだった。
モジモジと下を向いて、目を泳がせた。
まぁ、地元もこっちじゃないし、つい最近まで関西にいたんだ。
迷って当たり前かも。
私も初めて上京した時は、電車の乗り換えなどで苦労したもんだ。
おまけに、美咲が言うのは、日向はかなりの方向音痴って言ってたし。
納得。