キスの意味を知った日







「わざわざ、送ってもらってありがとうございます!」


車を降りて、深々と頭を下げた日向。

ニッコリと満面の笑みで私達に微笑みかけている。



――結局あの後、美味しいと人気のある居酒屋があるという日向情報で、その居酒屋へ向かった。

櫻井さんは初め『2人で行ってこい』と言っていたが、日向が必死に引き留めた。

日向の押しに負けた櫻井さんは、結局私達と共に夕食を取る事になった。

明日は朝一会議があるとかで『酒は飲まないから送っていく』と、なんとも使える男発言をした櫻井さんに甘えて、ガブガブ飲む事にした。


そして、着いたのは、照明が妙に落とされた、なんとも落ち着いた雰囲気の店。

奥にはバーカウンターがあって、ブルーに光っている。

大きな窓からは夜景が覗いていて、店内はお洒落なジャズが流れている。


居酒屋というより、ダイニングバーだ。

ばっちりカップル向けの。


基本、あまりペチャクチャ話さない性格の、私と櫻井さん。

結果、日向の質問攻めに答えるだけの流れになった。

それでも、頬をピンクに染めた日向が櫻井さんと話しているのを見て、また胸の奥がざわつくのを感じた。
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