キスの意味を知った日
深い溜息を吐いて、食べかけのオムライスを口に運ぶ。
どうにかして回避できないものだろうか。
「それって、強制参加?」
「当たり前じゃん」
当たり前の顔してそう言った美咲に、苦笑いを浮かべる。
ですよね~、と言葉を付け加えて、再び食事を再開した。
正直、社員旅行なんて面倒臭い。
どうせ、宴会では上司に酒注がなきゃいけないんでしょ。
面白くもない過去の武勇伝を聞かされて、永遠に作り笑いを浮かべる。
私はコンパニオンじゃないっつーの。
「あ、箱根って言ってたよ~」
「箱根ね~……。部長温泉好きだから」
温泉は個人的には嫌いじゃない。
でも、プライベートで行くのと仕事で行くのでは訳が違う。
どんよりと重たい気持ちを抱えて、何度目かの溜息を吐いた。