キスの意味を知った日


「仕事持っていくかな」

「部長に怒られますよ」

「だよな」


そう言いつつも、空を眺めて試案している櫻井さん。

きっとどうすれば、バレずに仕事ができるか考えているんだろう。

その姿を見て、やっぱり仕事人間だなと思ってしまう。


「でも、私もコッソリ持っていこうかな~」

「呑気だよな、このクソ忙しい時に」

「ですよね」


今までと変わらない会話が私達の間に流れる。

好きと分かってからも、特に変わりはない。

何一つ、変わらない日常。


というか、感情が溢れてしまうのが怖くて抑え込んでいるというのが、事実。

彼はただ1人の男ではなく、私の上司だ。

それだけで、ハードルは何倍も高い。
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