キスの意味を知った日
◇
「「かんぱーい」」
その声を皮切りに、一斉にグラスが持ち上がる。
広い宴会会場に、浴衣を着た社員がお膳を前に座っている。
何度かいろんなチームの人達と飲んだ事はあるけど、こんな大人数は初めてだ。
チラリと上座を見ると、部長の横に櫻井さんが座っていた。
妙に浴衣が似合っている。
まぁ、元々スタイルもいいし、顔も整っているし、何でも似合うんだろう。
言われたいセリフNO,1。
『何着ても似合うね』
内心羨ましい様な、妬ましい様な思いだった。
そんな事を思いながら、グビグビとビールを喉に流し込んでいく。
昼間に美咲と日向と一緒に、温泉街を食べ歩きしたにも関わらず、目の前に置かれた美味しそうな料理を前に、お酒が進んだ。
こうなったら、楽しまなきゃ損だ。
思いっきり飲んでやる。